こんな方におすすめ
- 水福連携ってなに?
- 水産業の課題への取り組みが知りたい!
- 水福連携の具体的な話を聞きたい…
この記事を書いてる人
- 農林水産省推進、『ノウフク・アワード2022』水産企業で歴代初の受賞。
- 『とうほくSDGsアワード2023』優秀賞
- 三陸ラボラトリ株式会社の専務取締役をとして水福連携を開拓。
- サラリーマン、経営者の経験(3社)を持つ32歳。
この記事を読んでわかること
- 水福連携とは何か
- 水福連携が必要な理由
- 水福連携に関与する行政、水産、福祉の役割
水福連携とは??
水福連携とは、沿岸部の基幹産業である水産業の人手不足や担い手不足の解消と、障がい者の就労機会の拡大を図ることを目的に作られた言葉です。
農福連携の水産バージョンのイメージで問題ありません。
水福連携が必要な理由
水産側と福祉側の両方向から必要性を解説します。
水産側の必要性
水産業を生業としている人口が毎年減っています。
さらに担い手の高齢化と若者離れが各地域で深刻な問題となってます。
福祉側の必要性
福祉事業所の目的(後ほど説明します)を達成するためには、様々な仕事を利用者に経験させる必要があり、その中でも沿岸特有の産業である水産は地域との関わりという点で密接にあるべき部分なのです。
水福連携で関与する行政、水産、福祉の役割
筆者が、水福連携を進める上で必要と感じた役割を各方面ごとに解説します。
SDGsによって認知度が上がっていますが、実務で水福連携を民間企業だけで行うのはハードルが高いのが現状です。
また、具体的に水産と福祉のどちらも精通している人材は日本にまだ多くいないのも事実です。
ここでは水福連携に必要な水産と福祉、そして行政のそれぞれの役割を解説していきます。
行政の役割
行政は、水産と福祉をどちらも学べる環境を作ることが求められています。
現在、岩手県で行われているマッチングとサポートをする必要があると考えます。
サポートにおいては、水産と福祉のそれぞれの目的やバランスを総合的に加味した人材を用意することが必須です。
水産と福祉の知識を兼ね備えた人材の育成が必要
筆者の場合は環境が良かったため水産と福祉の両方を学ぶことができましたが、なかなかそのような環境は整いません。
行政の役割としてはそういった学ぶことができる環境を設置することが役割だと考えます。
企業の役割
企業として福祉を迎え入れる環境を作らなければなりません。
バリアフリーな環境づくりや相談窓口、働く人がのびのびと平等に働ける仕組みや個人の能力を最大限活かす工夫などが必要です。
その中で、社内だけで解決しなければならないことがあります。
それは柔軟性の高い人材を管理職に配置することです。
気づき、考え、行動する人材が必要
これは会社の中間管理職として必要な能力です。
私の経験上このような人材は自ら成長し、問題を解決する力が備わっていると考えます。
また、水福連携に限らずどの産業、分野でも必要な人材であり、枯渇しているポジションでもあると考えます。
福祉の役割(働く利用者に対して)
利用者に対して企業が求めることはそこまで多くありません。
その代わりに、できないと困ることがあります。
『挨拶、返事、自己表現、嘘をつかない』
最低限これらはできていないと社会で働くスタートラインに立つことができません。
『挨拶、返事』は一般的な社会人としてのマナーにもあるように当たり前にできてほしいことです。
『自己表現』とはつまり、説明や指示があったときに分かったのか分からなかったのか、を意思を持って言うことができるかです。
指示する側、教えたりする立場からすると、理解してもらう必要があるから説明をします。説明に対しての返事によって理解度を探りますが、的を得た返事が返ってこなかったり、不安そうだと、伝わったかどうか不安になります。
結果的に作業を任せることができなくなり、自分で作業した方が安全だ、となってしまいます。
『嘘をつかない』とは、仕事を預ける上で最も必要な考え方です。失敗した時に嘘をつき、その場をやり過ごすと後々大きなクレームとなったり、取り返しのつかないことになってしまいます。
被害を最小限に食い止める意味でも失敗したらすぐに正直に報告することが大切です。
障害者に対しての考え方を改める必要がある
日本は常に周りと同じような行動をとる習慣があります。
そして、できることよりできないことに目を向けてしまいます。
日本の風習である『周りと一緒が良い』という考え方のように、できないこと(苦手、理由がありできないこと)でその人の社会的価値を測るのではなく、できること(得意、好きなこと)をその人の社会的価値として評価しなければならないと考えます。
例えば、身体障害者が水産の作業をできないかと言われるとそうではありません。
「気づき、考え、行動する」ことができれば管理者になれる可能性は大いにあります。
障害者と健常者という概念ではない
企業の役割、福祉の役割で説明したことは障害があるないに関わらず、社会で働く全ての人に言えることです。
健常者とはいえ、嘘をつくような人は周りからの信頼もありません。
会社での評価は、真面目に会社のために行動している人が、評価をされるべきです。
障害者、健常者を区別する必要はありません。
水福連携への世間の関心度と注目点
2023年9月現在、水福連携は水産業に浸透していません。それは参考になる企業が少ないのが原因の一つです。
SDGsやCSVの今
国分やイオンなど日本を代表する大企業では、当たり前の考え方となっています。
しかし商社や量販店ではサプライチェーン上、自社で商品にSDGsやCSVの付加価値をつけることが難しいのが実態です。
自社ブランドの商品であれば構築することができますが、全ての商品を自社ブランド化することは不可能です。
現場に近い中小企業だからできる
現場に近い中小企業であれば規模感を超えて、大企業と肩を並べることができます。
大企業はそういった具体的かつ先進的なメーカーを日々探しています。
現代社会において当たり前の考え方になっていることを理解する
日本だけでなく海外でも「エコ」や「SDGs」、「ESG投資」から連想されるように、当たり前の考え方となっています。
この事実に早く気づき、実行することが大切です。
値段が高すぎては意味がないということ
食品を扱っている業種であれば特に気にしている、商品単価。
高く売ることができれば確かに会社は儲かり、給料もたくさん払うことができるでしょう。
しかし、今までスーパーで100円だった食品が500円になったらどうでしょう。
結局は持続可能な形とは言えないと考えています。
この問題は会社だけでなく業界や、日本経済の関わりもあるためどうしようもできないのも事実です。
経済の変化や環境の変化にいち早く気づき、準備することが大切です。
水福連携を進める為の必要な知識
次に水福連携を進める為に必要な知識について解説します。
水産は福祉を、福祉は水産を深く知る
まずお互いに深く理解する必要があります。
大きな括りとして、水産業を生業としている会社は何を目的に経営をしているのかを知らなくては、共に協力をすることはできません。
会社は利益を追求する
会社である以上、目的は利益の追求が基本です。
従業員を抱えているのであれば尚更、無駄な経費を極力抑えようとし、サービス内容が複雑化、価値観の多様性により昔と違って、様々なことをしなければ会社は儲からなくなっています。
そんな中、人不足や働き方改革、福島原子力発電所の処理水問題などにより時代の変化に対応しきれていないのが現状です。
福祉は社会参加や就労機会、自立支援が目的
今回の福祉では主に、福祉事業所(A型、B型)について触れていきます。
福祉事業所(A型、B型)の主な目的は利用者の社会参加や自立支援、職業訓練や就労機会の創出、一般企業で働くためのスキルアップや経験、障害者雇用の促進、働くことによる経済的自立の支援です。
そして主な仕事として、事業所内でできる仕事の受注や施設外就労ががあります。
事業所内でできる仕事は箱づくりや梱包作業、シール貼り作業など軽作業が比較的多いです。
中には工夫を凝らした方法でNPOや他団体が連携し、地域活性した事例もいくつかあります。
施設外就労は企業へ訪問し、実際に一緒に作業をしながら様々なことを学びながら、工賃をもらいます。
施設外就労ができる利用者にとっては、効果的で目的に対してのアプローチがしやすいですが、施設外就労の加算が改定となり、さらにコロナウィルスにより受け入れ先企業が減少してしまいました。
働く意欲があるのにも関わらず厳しい状態となっているのが現状です。
さまざまな障害がある中、軽度の障害で働く力と意欲はあるが、一般企業での雇用につながらず事業所で最低賃金以下の働き方しかできていない人も中にはいます。
福祉事業所や支援センターの頑張りだけでは超えられないのが実態です。
今までお話ししていた部分は働く力がある人たちの場合です。
支援が必須となる人たちもいるのも事実、とだけ理解していただければと思います。
最後に
水福連携を筆者の経験をもとに解説しました。
筆者が設立した三陸ラボラトリ株式会社の詳しいSDGsはこちらの記事をどうぞ。
より詳しく解説してますのでご興味ある方はぜひご覧ください。
今回ノウフクアワード2022においてご評価いただいたことは大変ありがたいことであり、日本の水産業が大きく前進するきっかけになったと感じています。
水福連携での経験は水産と福祉に限らず、すべての企業に役に立つ考え方です。
- 会社の仕組みを理解できていない従業員が多い
- 管理職の育成が追いついていない
- 上司が部下の仕事をしっかり評価できていない
などの従業員、管理職、上層部の悩みが多い中で、筆者自身が管理をすべて行い、障害がありながらも個々の特徴を活かすことができ、それらをうまく会社の仕組みにすることができたからここまで来れたと自負しております。
現在は、この経験を企業や、働く健常者、障害者、福祉事業所に広める活動に力を入れております。
もしご興味がありましたらこちらからお問い合わせいただければと思います。